・大学院生がハイキング中に持ち帰った土の中に、珍しい分類不能の真核生物を発見
・Hemimastigotesの一種であるこの生物が新種であることが分かり、飼育して増殖させることに成功
・遺伝子解析の結果、動物界や植物界の上の分類である「上界」を形成するものであることがわかる
カナダの研究者が、動物界にも植物界にも属していない非常に変わった新種の真核微生物を発見しました。
また、2種を同じサンプルから発見し、飼育にも成功しています。遺伝的な解析も行なわれています。発見したのは、ダルハウジー大学の大学院生ヤナ・エグリット氏。ノバスコシア州にハイキングへ出かけたついでに集めた土のサンプルからの発見でした。論文は“Nature”で発表されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0708-8
発見されたのは“Hemimastigotes”の一種。過去100年の間では約10種の記録があるにすぎず、遺伝子解析もされていなかったことから、分類不明とされてきました。今回の発見で、“Hemimastigotes”と他の真核生物の共通の先祖は、動物が生まれてくる5億年前に存在したことが推測されます。
エグリット氏が春のハイキングに行ったのは2年前。他の学生と一緒にハリファックス郊外のザ・ブラフ・ワイルダーネス・ハイキング・トレイルに散策に出かけた時のことです。エグリット氏はポケットやバックに空のサンプル瓶を持ち歩くことが常となっており、気まぐれで散策路の脇の土をスプーンで数杯すくって持ち帰りました。
3週間後、休眠中の微生物を復活させて観察するため、研究室で土壌サンプルをいつものように水に浸しました。そしてその後数週間に渡り観察を続けていたある日、とても奇妙な生物を見つけました。その生物は鞭毛に覆われていますが、他の鞭毛を持つ微生物とは違って、鞭毛の動きに統制が取れておらず、ランダムな動きをしていました。実はエグリット氏には、その奇妙な動きに心当たりがありました。数年前に見た貴重な“Hemimastigote”の動きと酷似していたのです。
“Hemimastigote”が最初に見つかったのは19世紀ですが、この生物が進化系統樹のどこに位置するのかは謎不明でした。“Hemimastigote”は動物や植物のように細胞内小器官を持つため、細菌や古細菌ではなく、真核生物であることが分かります。エグリット氏はこの謎に挑戦するため、同僚の大学院生と一緒に、この新しい微生物の研究に没頭しました。
観察を続けていると、驚いたことに、その同じ培養皿に違う種類の“Hemimastigote”を発見しました。このような珍しい生物が、同じサンプルの中から2種類も見つかったのです。さらに、この2つ目に発見された“Hemimastigote”は新種であることが判明。研究者たちは、この新種に“Hemimastix Kukwesijk”と名付けました。ミクマク族の神話に登場する、欲深くて毛深い鬼にちなんだ名前です。
“Hemimastix”には、エサを取り込む頭がついていて、銛のような器官で珪藻を捕らえて捕食します。そこで、研究者たちはこのエサとなる珪藻を育てて、“Hemimastix”に与えてみました。すると、与えられたエサを食べて増殖さえするようになったのです。つまり、この新種の生物を飼育することに成功したのです。それによって、増殖させて遺伝子解析を行ったり、他の研究室に分け与えることが可能となりました。
現在までの遺伝子解析の結果、“Hemimastix”が独特で他の生物とは異なっており、“Hemimastix”だけが属する「界」の上の分類「上界」を形成することが分かりました。
研究は現在も続いており、より完全な遺伝子解析などが行なわれています。今回の発見は、真核生物の進化の研究において、大きなものとなりました。その発見をもたらしたのは、ハイキング中に「たまたま」集めた土です。もしかしたら私たちの身の回りにも、何か大きな発見が眠っているかもしれません。
via: CBC/ translated & text by SENPAI
(出典 news.nicovideo.jp)
<このニュースへのネットの反応>
ロマンが広がる
これ、虫じゃなくて菌なのか!?
Natureに載ってる論文に正面からいちゃもんつけるのは勇気がいるけど、使ってる系統樹推定法(ベイズ法)やソフトウェア(IQ-Treeのultrafast bootstrap)に起因する問題で、系統樹そのものの信頼度がそこまで高くならないから、新たな分類単位に属する生物が出て来たとまで断定的に言えない可能性が少なからずある。
蟲の仕業ですな(蟲煙草すぱー)
NEBULARTさんHemimastix Kukwesijkは菌類やバクテリアとは全く別の生物です。バクテリアには核がないですし、菌類(fungi:いわゆるカビ・キノコ・酵母の仲間)とはかなり遺伝的に遠いので。生物全体を俯瞰的に見たときに、菌類は動物に近い生き物なんですよ。
今回の生物はゾウリムシとか植物とかを含む大きなグループには入らないし、動物や菌類・粘菌を含む大きなグループにも入らないって結果が出てるんです。実際、一部の系統の真核生物に特徴的だと思われていた遺伝子を幅広く含んでいるっぽいですね。なので、かなり古い時期に分岐した生物であると筆者たちは考えているようです。
夢が広がると同時にゾワゾワとした恐ろしい喜びを感じる。中間に位置する進化途中の生物なのかな?
細胞の進化発達過程のミッシングリンクの一端を掴んだということかな、始祖鳥みたいなもので
たまたま持ち帰った土から見つけたってのがもうロマンだなあ。研究を応援したい
見つけた時も研究中もテンションアゲアゲでさぞ楽しいだろうなぁ・・・w レッドデータブック記載種見つけただけでテンション上がるのに、新種しかも謎生物ときたらもぉ・・・
不思議な新種の神話生物と聞いて
まさか、この生物と人類が戦うことになるとは……
大学院生が持ち帰った土というところでバイオハンターを連想した。未発見の有用な微生物を採取しようとしていたところ、この真核生物を発見したのかなあ。
単為生殖あるいは分裂したのかな。同種の珍種が二体以上土壌サンプルに含まれてたとなると、これはまたさらに凄い偶然の上積みなんじゃないかと思うけど。真菌の仲間って細胞分裂で増えるんだっけ?
勘違いした。真菌じゃなくて真核生物だったか
真核で細胞壁があれば菌類、無ければ動物、細胞壁と葉緑体があれば植物と思ったけど
AJとアラスターじゃん!やるなあ!!
アラガミかな?
ごめん、読みにくいからHemimastixもカタカナで書くか、他のカタカナも英語に揃えるかして。後者なら読むの諦めるけどな、ネタ過ぎて話題が頭に入らんし。
裏返したい…
太歳ってやつか
未だに分類不能な生物とか出てくるのか…驚きだ
その辺の土から出てくるって、世の中まだまだ知らないことだらけだねぇ…
現場盛り上がっただろうなぁ
まだまだ陸上にも知られていない生物がいるんだなぁ。こういう研究者は、毎日が楽しいだろうなぁ。日本じゃ肩身の狭い思いをするだろうけど。
太古の生物としたら、新しいバイオハザードの原種になりかねない!人類の新たな敵!
やっぱり新発見ってそこら辺に落ちてるんだな、それに気づくか偶然拾う幸運があるかが凡人と天才の違い
不用意に増殖させちゃって大丈夫?バイオハザード発生しない?
HPLさんに連絡だ!!
ノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智先生の発見はゴルフ場でしたっけ。こういうポケモンGOみたいな研究楽しそうですが、砂漠の中から宝石を探して、本当に宝石なのか知識が必要な研究は大変そう。本当に尊敬する。
ゴジラ細胞かな?
蒼き衣を纏いて金色の野に降りたつべし(`・ω・´)
パターン青、使徒です!
宇宙生物とかかな?ロマンですねぇ。
まさかこいつを増殖させたせいで未来があんなことになるなんてな・・・
この発見につながったのは以前に“Hemimastigote”の貴重なサンプルを見ていたから。1つの発見にはその他のサンプルの分類保管、公開、閲覧という作業が必要で、だからそれも科学の重要な仕事なのだ
台所から新種が生まれる可能性もある訳か
ジャックさん リアルな話、現在の技術では培養不可能な種って結構いるんですが、今となってはそういう種の遺伝情報も純粋培養抜きの力技で読む技術が確立してるんです。台所の排水口のヌメヌメに巣食う巣食う謎の微生物群集から手に入った謎生物が、回り回って宝の山になる可能性が割とあったりします。
その代表格が、核を持つ真核生物に結構近いのではないかと言われているアスガルド古細菌って生物種です。オーディン・トール・ロキ・ヘイムダルといった分類名がついている古細菌で、その名前にはちょっと心が疼く人も多いと思います。
このサイズだと動植物の境界はあいまいですな
何となく、この外観のフォルム的にジョークっぽいニオイが漂ってるんだけど、4月1日でもないしなあ。
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