カレー店を増やすのは難しいのに、なぜ「100時間カレー」は急増しているのか


 カレーの外食店といえば? 多くの人は「カレーハウスCoCo壱番屋ココイチ)」を想像するはず。それもそのはずで、店舗数は断トツに多い。ココイチの店舗数は1400店を超えているのに対し、2位の「ゴーゴーカレー」は70店ほど。その差は20倍ほど離れているわけだが、「業界2位に躍り出るのでは?」と感じさせられるほど勢いのあるカレーチェーン店が登場した。「100時間カレー」(アークス、東京都豊島区)である。

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 「ん? 100時間カレー? そんな店聞いたこともなければ、食べたこともないよ」という人もいると思うので、簡単にご説明しよう。「100時間カレー」は2013年に、東京の武蔵小山で産声をあげた。ホテルレストランで出てきそうな、いわゆる欧風カレーで、ルーの色は「ビターチョコ」といった感じ。自社配合の20種類以上のスパイスを使っていて、100時間ほどかけてつくっているという。

 オープンして翌年、日本最大級のカレーの祭典「神田グランプリ」に参戦したところ、いきなり優勝。16年には過去最大の差をつけて2度目の優勝を手にした。名刺代わりになるような実績を手にしただけでなく、「おいしい」といった口コミが広がって、店舗数は順調に増えていき、イートインが25店、デリバリーが87店、合わせて112店に達している(8月末現在)。

 驚くのは、それだけでない。昨年12月、本格的にデリバリーを展開してから、その後もどんどん増えているのだ。勘のスルドイ読者であればお気付きだろうが、新型コロナウイルスの感染拡大が広がって、多くの外食がダメージを受けている状況にもかかわらず、一気に増やしていったのだ。

 「カレー店を増やすのは難しい」と言われているのに、なぜ100時間カレーは増やすことができたのか。アークスで専務取締役を務め、カレーレシピを開発した素谷滋さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

カレー店を始めたきっかけ

土肥: 100時間カレーの店舗数が増えていますよね。首都圏を中心に展開しているので、「食べたことがないよ」という人が多いかと思いますが、デリバリーの拠点もどんどん増やしている。店の数が増えている背景をお聞きする前に、質問が一つ。素谷さんはカレーレシピを開発されたそうですが、どういったきっかけで店を始めることになったのでしょうか?

素谷: 2013年4月、この会社で働くことになったのですが、なにをやるのか決まっていなかったんですよね。以前、焼き肉店で働いていたときに、そこで従業員のまかないをつくっていました。肉をカットした際に、端材が残る。そのまま捨てるのはもったいないので、ハヤシライスをつくっていました。それを食べてくれた人たちから「おいしい。もっとつくってよ」とか「ハヤシライス店をやれば、うまくいくんじゃないの?」といった声がありました。

 当時のことを思い出して、「ハヤシライス店をオープンするのはどうか」と考えました。しかし、市場規模を考えると、事業化を進めるのは難しい。「じゃあ、カレー店はどうか。よし、それでいこう」と勢いだけで決めました。

土肥: 通常であれば市場調査をして、競合はどこか。立地はどこがいいのか。メニューはどうするのか。人の確保はできるのか。など、さまざまなことを考えなければいけないのに、向こう見ずな形で決めちゃいましたね。

素谷: 4月に入社して、店は6月6日オープンしました。まだレシピが決まっていないときに、物件が決まっていたんです。社長から「いい物件があったので、そこに決めたぞ」と。その店は武蔵小山にあって、以前はスナックをやっていました。いわゆる居抜き物件で、広さは7坪ほど。カウンターしかない狭さなので、「ここでやっていけるかな」とちょっと不安を感じたのですが、「味がよければなんとかなるだろう」と思っていました。

土肥: ちょ、ちょっと。外食産業で長く働いている人が聞いたら、「この業界をなめてたらアカンで」と怒られそうな話ですね。で、続きは?

ポスティングで集客

素谷: オープン前までに、レシピを決めなければいけません。人気があるところ、話題になっているところなどを中心に食べ歩きました。店をたくさん回っていくうちに、方向性が定まってきたんですよね。「欧風カレーがおもしろそうだ」と。有名店のいいところをチョイスし、そこに自分なりのアレンジを加えて、商品を開発していきました。

 「カレーは2日目がおいしい」といった話を聞いたことがありますよね。時間をかけてつくったところ、おいしく感じることができました。このほかにも「牛肉をどのくらい煮込めばいいのか」「冷温熟成したほうがいいのか」といった形で、試行錯誤を重ねていくうちに、調理にものすごく時間をかけていることが分かってきました。調理時間を足してみると、100時間を超えていたんですよね。

 「ちょっと時間をかけすぎではないか」と不安を感じたのですが、味はおいしい。ただ、そのときに「100時間カレー」というネーミングはどうかと思いつきました。調理時間は長いけれど、インパクトを感じることができたので、「100時間カレーでいこう!」となりました。

土肥: で、オープン初日を迎えたわけですよね。お客さんからはどんな反応がありましたか?

素谷: 会社の人間は、ポスティングが得意なんですよね。

土肥: ポスティングが得意? どういう意味ですか?

素谷: 当社はいくつかの事業を展開していまして、その一つにポスティングをやっています。カレー店をオープンするにあたって、近隣にチラシを配りました。自社のチラシを配るのは大きな会社が多いので、小さな会社のカレー店のメニューを見て、びっくりした人が多かったのかもしれません。「なに、これ?」と。また、住宅街に店を構えたので、「ここにカレー店ができるの? どんな味がするんだろう?」と注目したのかもしれません。いきなり、想定以上の客数となりました。

土肥: スタートダッシュが切れたわけですね。その勢いで2号店を出店したのですか?

カレーをつくるスペースがない

素谷: 店が繁盛したことはものすごくうれしかったのですが、その一方で課題が出てきました。カレーをつくらなければいけないのに、つくれない事態に陥りました。100時間かけてつくるということは、そのぶんスペースが必要になる。カレーが入った寸胴鍋を置かなければいけないのですが、それを置くところがなくなってきました。

土肥: 客数が増えれば増えるほど、寸胴鍋の数も必要になってきますからね。

素谷: オープン当初は「定休日なし」だったのですが、それだと店を回すことができなくなって、半日休んでカレーをつくることに。それでも回らなくなりまして、週に1日休むことに。カレーをつくる日を決めないと、店を運営することができなくなりました。「このままではいけない」ということで、2号店は広いスペースのところにしました。

 2号店は5店舗分のカレーをつくることができる。というわけで、2号店でつくったカレーを、他の店に配達するといった形で運営していました。とはいえ、そのころはまだ「軌道にのった」とは言えずでして、家賃の安いところを借りて運営していました。また、開業資金も潤沢ではなかったので、壁にクロスを貼ったり、木を切って棚をつくったり、自分たちでできることはなんでもやっていました。

土肥: DIYが得意でなければ、なかなかできることではないですよね。潮目が変わったのはいつごろでしょうか?

素谷: 2014年と16年に、カレーの祭典「神田グランプリ」で優勝しまして、商業施設さんからお声がかかるようになりました。「ウチの施設内で出店しませんか?」と。その一方で、ある人から「ショッピングセンターフードコートカレー店を繁盛させるのは難しいよ」といった声もいただきました。

 ちょっと調べたところ、確かにカレー店でうまくいっているところは少ない。ただ、個人的に自信がありました。「ウチはやっていける」と。どういうことか。ショッピングセンターで食事をすることは、非日常的なこと。家で食べるようなカレーは食べたくないのではないか。100時間カレーは欧風カレーなので、ルーの色は黒い。また、カレーソースポットを使っているので、“家では食べられないカレー”と感じてもらえるのではないか。

 この予想は、当たりました。出店したフードコートのことを調べたところ、以前そのスペースで某カレーチェーンが店を構えていまして。売り上げを比べると、その店の2倍を超えることができました。別のフードコートでも出店したところ、そのスペースでも以前、某カレーチェーンが店を構えていました。売り上げを比べたところ、その店の3倍売れました。

 こうした結果を受けて、「フードコートは当社にとって、ブルーオーシャン(競争相手がいない市場)ではないか」と考えました。「店舗数をどんどん増やしていけば、うまくいくのではないか」という方針で動いていたら、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くのショッピングセンターは閉店する事態に。当然、当店の売り上げもガクンと落ちてしまいました。

●併設店の運営は難しい

土肥: ふむふむ。そこで、気になることが一つ。新型コロナ感染者が増えて、2月末ごろから外食産業は大ダメージを受けることになりましたが、そのころに100時間カレーはデリバリーを増やしていますよね。感染拡大を受けて、「イートインはダメだ。デリバリーでいくぞー!」となったのでしょうか?

素谷: いえ、そういうわけではありません。オープン当初から、デリバリーにもチカラを入れていました。ただ、イートインとデリバリーを併設して運営することは、ものすごく難しいんですよね。来店客が多い時間帯と、デリバリーの注文が多い時間帯は同じ。ご想像のとおり、ランチタイムです。

 お腹はペコペコなのに、商品がすぐ出てこない。イライラしているときに、目の前でデリバリー用の商品を目にしたらどのように思いますか? 「カレー、あるじゃない。これ、出してよ」と感じる人がいるかもしれません。

 店のスタッフもそのことを気にかけていまして、どうしたらこの問題を解決することができるのか悶々としていました。また、人の問題もありました。配達するのに人員を確保しなければいけませんが、注文がなければその人件費が負担になる。そこをどうコントロールすればいいのか、といった課題もありました。

 しかし、解決策はなかなか見つからない。ということもあって、デリバリーをやめた店舗もありました。しかし、デリバリーを展開すれば、売り上げは伸びる。どうしたらいいのかなあと考えていたところ、名古屋に拠点を置くSBICさんから声がかかりました。「一緒に、やりませんか?」と。

 SBICさんは宅配専門店「かさねや」という業態を展開されている。とんかつを中心に、かつ丼カレーなども扱っているんですよね。料理を提供するのは当社で、配達はSBICさんという形でできないかと考えました。

土肥: 店舗を持たずにデリバリー注文のみを受け付ける、「ゴーストレストラン」のような形でしょうか?

素谷: ですね。昨年12月に試験的に始めたところ、売り上げは好調でして。想定の5倍ほど売れたので、両社で「デリバリー店を拡大していこう」ということになりました。ちょうどそのころ新型コロナの感染拡大を受けて、既存店に影響が出ていました。特に、商業施設での売り上げは厳しかったので、新規出店はデリバリー専門にシフトしたところ、7カ月で70店舗以上展開することができました。

レストラン区画で苦戦

土肥: 100時間カレーの出店を見ていると、立地のうまさを感じました。イートイン住宅街や駅から少し離れたところが多いですが、ポスティングや口コミなどの影響で、集客に成功している。新型コロナの影響を受ける前は、フードコートでも売り上げを伸ばしていた。また、デリバリーでも強さを発揮している。その一方で、うまくいかなかったケースもあったのではないでしょうか?

素谷: 商業施設内のレストラン区画に出店したことがありまして、ここはうまくいきませんでした。40坪ほどのスペースで、従来の店と同じスタイルやってみたんですよね。しかし、ダメ。なぜか。フードコートの場合、「ワタシはカレー」「オレはうどん」といった形で、それぞれが好きな商品を選ぶことができますよね。しかし、レストランという形で店を構えると、店内に入ったお客さんはカレーを食べなければいけません。

 「カレーは好きだけれど、ちょっと違うモノも食べたいなあ」と思っても、メニューが少ないんですよね。トッピングは用意していますが、それで満足することは難しい。例えば、ラーメン店はどうか。ラーメンのほかにも、ギョーザもあれば、チャーハンもあれば、から揚げもある。中華のメニューを用意できるので、多様なニーズを満たすことができる。一方のカレー店はどうか。当社の場合、カレーしかない。ということもあって、「どの店にしようかな」と迷ったときに、選択肢の中になかなか入らなかったのかもしれません。

土肥: では、レストラン区画での出店は諦める?

素谷: いえいえ。夜に行っても満足できるように、付加価値を高めていかなければいけません。ズバリ、メニューの充実ですね。

土肥: 今後の出店立地は、どのようなところを考えていますか?

素谷: 駅前の一等地に出店することを考えています。新宿といった人の流れが多いところだけでなく、カレー店が多い秋葉原など、激戦区でも挑戦していきたいですね。

(終わり)

「100時間カレー」の店舗数が増えている


(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>

毎年行われる神田カレーグランプリで食べ比べた時、確かに丁度良い辛さで一番おいしかった。 その後殿堂入りしたみたいだが納得と感じた。 それから時々食べに行ってる。 ちなみに神田カレーグランプリは食べた人がおいしいと思ったところに票を入れるシステムでかなり大勢の客が来るから、サクラでどうこうできるレベルじゃない。


1コメみたいなコメントは助かるね。それとは別に、グーグルで検索かけたら、まずいって検索ワードが出てきた・・・。


店舗検索してみたら、地元どころか近畿圏内に一軒もないという。


100時間カレーは欧風でちょい独特だから合わん人もいるかもだが、嵌る人は本当に嵌る。でも、うちの近くの宅配してくれた店は結構前に閉店しちゃったんだよなぁ


記事を見ると成功しているのはデリバリー専門の店舗が増えたというだけでは?ちょっと良いカレーを提供するという方針のようだが、カレーは牛丼やラーメンと並ぶ大衆食です。食べ応えのあるカレーを提供するココイチの戦略に対して、一等地にレストランとして勝負は成り立つのだろうか?フードコートやデリバリーではちょっと良いカレーは目立つから勝負になるのはわかるが……。


神田カレーか、実店舗で食べたわけではないが、なんかそういうグランプリをとったカレーだということでメニューにあったカレーなんだが申し訳ないが自分には不味いと思ってしまった。いくらグランプリをとっても百、千、万といえればその中に一人くらいはでるだろうな。まぁでもカレーはよほどのことがない限り大衆受けするメニューだと思うから美味しければ増えてもおかしくはないかな


CoCo壱のライバルくらいにはなって欲しかったが、値段的にそうはならなそうだなぁ


どうせ数年後には「急拡大したあの店が倒産」とかいういつものニュースをニヤニヤしながら書くんだろ 「なにがいけなかったのか(キリッ」とかいつもの調子で


カレー専門店は大都市では昔からある。全国展開なんてもう無理だよ。


周りにはココイチしかない


好みはあるだろうけどまずいカレーってのは想像がつかん。カレーはカレーだろ。しかし東京の店舗が少なすぎて行くことはないと思う。


大阪の梅田なんて少し歩いただけでも老舗のカレー専門店沢山ある。そしてなぜか海の家・大プールでのカレーっておいしいのかね。


なぜか山口県にも出店してきたので食べに行ってきた。店名のインパクトに引かれてではあるが、美味いね。ココイチに対抗できるか?はまだ分からんけど


カレーの店増やすのが難しいのは味とか店舗形態とかは関係ない。スパイスの大量調達できるのがハウスとS&Bしかないから。ココイチがハウス傘下だから、他はS&Bに買収されないと全国展開は無理。




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